少年時代は漫画家志望で、20代後半になってからプロの脚本家としてデビューした古沢良太さん。脚本の技術はどうやって学んできたのだろうか。

――脚本を書く力はどのように鍛えてきたのでしょうか?

 実践の中でだと思いますね。一つ一つ仕事をしながら、いろいろなことを覚えて身につけていったと思います。

――テレビドラマの脚本は、オリジナル脚本の場合でも大まかなテーマや内容の指定がある場合が多そうですよね。そこで鍛えられた部分も多いのではないでしょうか。

 そうですね。テレビドラマではいろいろな制約もありますし、タイトな締め切りもあります。その中で書くことで覚えたことは多かったと思います。

――古沢さん作のショートコミック『ネコの手は借りません。』には、脚本家が水着のシーンを作ったら「女優さんが水着NGになっちゃった」と言われ、口紅に毒を仕込むトリックを書いたら「スポンサーに化粧品会社があるから」と修正を指示され……という話がありましたね。そういうことは実際にあるんですか?

 はい。時々ですけど、実際にありますね。

――実践の部分以外で、ほかの脚本家さんの仕事を見て「こうやって書くのか」と感心したことや、「この人の書き方はすごいな」と感じたことはありましたか?

 

 あまりほかの脚本家さんを知らないので、ほぼないのですが、僕が最初に連続ドラマの仕事した『動物のお医者さん』(2003年)のときにそういう経験がありました。そのときは全然上手に脚本を書けなくてギブアップしてしまい、代わりに江頭美智留さん(代表作に『ごくせん』、『1リットルの涙』など)が書いてくださった回があったんですが、それを読んだときは「プロはこうやって書くのか」と感じました。当時の僕は、素人だった人間が脚本家になったばかりで、「凄いものを作ってやろう」と意気込みすぎて、届かないものを目指して苦しんでいる状態でした。そんなときに江頭さんの脚本を読んで、「できる範囲で最善のものを作る」というプロの仕事を知ったというか。その部分では影響を受けましたね。

――過去の脚本家の作品を読み込んで……というよりは、実践の中で学んでいった部分が大きいんですね。

 もちろん脚本はたくさん読んできましたよ。黒澤明の脚本集も読みましたし、倉本聰さん、向田邦子さん、山田太一さん、市川森一さんといった先生方のものも、かなり読んでいます。

 

――そういった先人たちの脚本の凄さはどういう部分にあると感じましたか?

 やっぱり、それぞれが強い作家性を持っていらっしゃいますよね。一人ひとりがかけがえのない脚本家ですし。共通点としては、やはり人物が生き生きしているということ。もちろんストーリーも面白いんですが、人物が生命力をもって生きているというのが、そうやって読んできた脚本の特徴だと感じました。

 
 
〈明日の質問は……Q「脚本を書くための「インプット」では何をしていますか?」です。〉