日本の軍部独走・侵略史観に基づく悪玉扱い、逆の「日本は悪くなかった、悪いのは周りの大国だ」という日本小国史観、海外大国による外圧・陰謀史観。これらの歴史観はすべて間違いだ。『学校では教えられない 歴史講義 満洲事変 ~世界と日本の歴史を変えた二日間 』を上梓した倉山満氏が満州事変の真実に迫る!
満州国の国旗。左上隅に五族を表す横縞模様がある。

■人類が不幸になっていく始まりの大事件

 満洲事変は、すなわち、国際連盟体制の崩壊でした。日本と世界にとっての悲劇です。帝国陸海軍は最強の国でした。大日本帝国は大国であり、新渡戸稲造ら優秀な人材を送り込んで連盟を支え、立派に機能させていました。

 しかし、日本は勝手に孤立していきます。その原因は、日本人の「問題を解決しなきゃいけない病の発露」です。欧米人、中国人、ムスリムと違い、日本人は問題があれば解決しようとして「やらかして」しまうのです。まさに「やらかして」しまったのが満洲事変です。

 日本が国際連盟を脱退した原因は、満洲国の承認問題、ただそれだけです。どうして満洲国のために世界を敵に回さなければならなかったのでしょうか。ちょっとやそっとでは意味がわからない、そこ一点が、満洲事変の本質です。

国際連盟脱退翌日の東京朝日新聞昭和8年2月25日朝刊2面

 日本の敵はソ連でした。その自衛対策のために、緩衝地帯の満洲が必要でした。その満洲が抱える問題を日本は「解決」しようとしました。

 中には満洲に理想を求め、「五族協和」の「王道楽土」を大真面目に建設しようと活動した人もいました。何を寝言を。たいそう、ご立派です。別にやるなとは言いませんが、世界のすべてを敵に回してまでやることなのか。やるなら、もっとうまくやればよかったです。

 そもそも「王道楽土」とは何なのか、何が「王道」で、どうなれば「楽土」なのかわかりません。こういう感傷的なスローガンを政治に持ち込んで、碌なことがありません。

 余談ですが、林銑十郎首相が「祭政一致」、鈴木善幸首相が「和の政治」を言い出した時、国民の物笑いになりました。同じです。

 話を戻すと、「五族協和」などと言っている時点で、大陸とは何かがわかっていません。「戦前の日本は大陸を侵略した」とがなり立てる人がいまだに後を絶たないのですが、私に言わせると逆です。「真面目に大陸を侵略する気があったのか?」です。せめて、「万族協和」にしておけばいいものを、「五族とは、どの五族だ」などと、真面目に論じていました。

 ユダヤ人の満洲移住計画・河豚計画が提唱されたときには、「六族になってしまうではないか、どうするんだ」などといった、すべてがそういう発想なのです。

 一九三一年から三三年の満洲事変、あるいは満洲国建国は日本の侵略だったと世界中から言われています。そうした歴史観を、鈴木善幸(一九八二年教科書問題)、宮沢喜一(一九九三年河野談話)、細川護熙(一九九三年細川答弁)、村山富市(一九九五年村山談話)、安倍晋三(二〇一五年安倍談話)で、歴代内閣が認めてしまっています。

 しかし、世界を見ればどうでしょう。アメリカはアフガン戦争やイラク戦争で傀儡政権を樹立しています。ロシアはグルジア紛争で傀儡国家を独立させています。日本の満洲事変ほどの正統性があるのか。中華人民共和国がチベットや新疆ウイグルでやっているような残虐行為を、日本が満洲事変で一度でも行ったか。

 そしてこうしたことに、日本人自身が語るべき言葉を持っているか。

 満洲事変を正しく知るということは、今の日本を正しく知るということと同義です。そして、そこに起こるだろう失敗を予見して、改めなければならない、ということです。賢くなろう、というのは、今後の日本をちゃんと考えることができるようになろう、ということに他なりません。

『学校では教えられない 歴史講義 満洲事変 ~世界と日本の歴史を変えた二日間 』より抜粋 

次回は、シリーズ⑥満洲とは何か です。