4月29日から始まる卓球の世界選手権。2000年生まれの黄金世代「みうみまひな」が揃った女子への注目度が高い。石川佳純(25)、平野美宇(18)、伊藤美誠(17)、早田ひな(17)、長﨑美柚(15)。5人の選手はどんな個性を持ち、どんなプレーに注目すればいいのか。「神解説」でおなじみの宮﨑義仁さん(日本卓球協会強化本部長)に聞いた。

「心臓に毛が生えている」伊藤美誠

--前回に引き続き、女子代表5人の個性や注目点をうかがいます。伊藤美誠(世界ランク7位)は今年の全日本選手権で、シングルス初優勝を含めて三冠達成。フットワークが強化され、〝動ける卓球〟に生まれ変わりました。

宮﨑 伊藤美誠は「心臓に毛が生えている」という表現がぴったりの子。クソ度胸があるというか、大舞台で全くビビらない。逆に楽しめる余裕がある。

 そして普通の卓球とは違う、伊藤にしかできない卓球をやる。普通はバックスイングを引いてスマッシュを打つんですけど、伊藤の場合はバックスイングを引かずにパンと打つ〝みまパンチ〟をやったり、相手が「え、これ卓球なの?」と思うような、変わったプレーをする。卓球とバドミントンの異種格闘技をやっているみたいな攻めをするんです。

 ラバーも表ソフトという、回転のかかりにくい異質のラバーを使っている。対戦相手がやったことのない卓球が出せれば、中国にも勝てると思います。

--全日本は強かったですね。準決勝は石川佳純を、決勝は平野美宇を負かした。

宮﨑 精神的にも安定していましたし、威力のあるバックドライブを習得したのが大きかった。表ソフトの選手は、下回転の長いボールをバックに出されるのが一番弱いんです。ドライブをかけにくいので、その球を持ち上げると全部やられる。

 ところが伊藤は表ソフトなのに、威力のあるバックドライブを出したのが全日本なんです。あれができるのは中国のトップ選手だけで、日本の女子でやったのは初めて。中国も予測しづらいボールです。

--伊藤選手はサーブが多彩だったり、あと1点という勝負のポイントで急にそれまでやってなかったプレーを出したり、戦術の引き出しも多いように見えます。代表選手を戦術面で比較すると、優れているのは?

宮﨑 それは石川佳純でしょう。それだけ経験も豊富ですから、ダントツだと思います。伊藤美誠は戦術というよりも勝負勘。自分の勘を頼りにやる。平野美宇は戦術というよりも自分のプレースタイルを押し通す。

 石川はどの戦術にも合わせられるカメレオン的な良さを持っていて、相手の戦術を全部受け止めて、自分のパターンにして打ち返すことができる。伊藤は戦術がない。将棋で言うと、いきなり端っこに打ったり、そんな感じ(笑)。平野は中飛車と決めたら、中飛車(将棋の中央突破の戦型)を押し通す。それを押し通しきれたら、突破力は一番強い。タイプがそれぞれ違うんです。

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