日本の軍部独走・侵略史観に基づく悪玉扱い、逆の「日本は悪くなかった、悪いのは周りの大国だ」という日本小国史観、海外大国による外圧・陰謀史観。これらの歴史観はすべて間違いだ。『学校では教えられない 歴史講義 満洲事変 ~世界と日本の歴史を変えた二日間 』を上梓した倉山満氏が満洲事変の真実に迫る!

■「アーバンチャンピオン」の世界だった中華民国

 幕末の緊張に耐えて明治維新をやりとげ日清日露の戦争を勝ち抜いた日本と、何の努力もしなかった清と朝鮮の運命がおのずと異なることは当然だと言えるでしょう。一九一〇年、朝鮮は日韓併合されてしまって終わりです。かたや清朝の方では、革命が起きてしまいます。

 清朝は地獄に堕ちました。辛亥革命で満洲人は追い回され、漢民族の孫文が中華民国を建国しますが、軍閥の袁世凱が乗っ取ります。しかし袁世凱の政権も安定せず、「軍閥混戦」と呼ばれる大動乱時代に突入します。五代十国や五胡十六国、あるいは三国時代のような大分裂です。

 中華王朝は伝統的に、漢民族を中心として見ると、東北から満蒙回蔵にぐるりと取り囲まれています。清朝は、それら五族を全部まとめてやってきたわけですが、辛亥革命で中央政府が無くなってしまいます。

 国際法用語で、「条約遵守能力なし」という状態です。「条約遵守能力なし」というのは、外国との約束を守る能力がないという意味に定義されますが、それは同時に、国内の治安維持ができないということでもあります。

 当時の中華民国は、「アーバンチャンピオン」の世界です。「アーバンチャンピオン」とは、一九八四年に発売されたファミリーコンピュータ用の対戦格闘ゲームです。 「アーバンチャンピオン」の称号を求めて、ケンカ自慢の男たちが都会の片隅で一対一の殴り合いを繰り広げます。素早いパンチと強力なパンチを上下に打ち分け、相手を画面の端へと追い詰めていきます。残り数が一になるとフタの開いたマンホールが現れるので、相手を追い詰めてマンホール
の中に落とすと勝利です。建物の窓から落ちてくる植木鉢が頭に当たると、少しの間動けなくなってしまうので要注意です(任天堂公式ホームページより)。トーナメント戦かと思ったらリーグ戦で、負けたやつがまた次の試合に平気で出てくるような、「お前はいったい何者やねん」というのが次から次へと出て来る状態です。孫文だって、そういう中のひとりです。

 政府がこの状態ですから、周辺民族への統治など存在しません。

 蔵(チベット)はイギリスの勢力圏にあります。回(ウイグル)はイギリスとロシアの角逐(かくちく)の場。蒙(モンゴル)はロシアの勢力圏です。満洲はロシアと日本の勢力圏です。どこにも中央政府はありません。

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