ワルサーP38、シュマイザー短機関銃、モーゼル小銃……20世紀のドイツ軍を支えた、世界屈指の名銃に迫る連載、第3回。
民間型狙撃用スコープを装着したKar98k狙撃銃を構えるドイツ軍兵士。製造直後の試射において特に優れた命中精度を示した本銃は、このように狙撃銃へと転用されることが間々あった。

■映画『史上最大の作戦』にも登場

 ・・・・1944年6月6日Dデーの未明、アメリカ軍空挺師団2個がノルマンディーに降下した。連合軍のヨーロッパ大陸反攻作戦「オーヴァーロード」の開始だ。空挺隊員たちには金属製の玩具のクリケット(コオロギ)が支給されており、真っ暗闇の中、誰何のため「ペキッ」と1回鳴らしたら、味方は「ペキッ、ペキッ」と2回鳴らし返すことになっていた。ある空挺隊員が前方の暗闇に人影を認めて「ペキッ」と1回。それに対して「カキン、カキン」と2回の金属音が返ってきた。安心した彼は物陰から出て「よう、戦友!」という間もなく射殺されてしまった。彼を撃ったドイツ兵は、愛銃のマウザーKar98kのボルトを操作する。「カキン、カキン」。クリケットに類似した同銃のこの操作音を、哀れなアメリカ空挺隊員は味方の返答と勘違いしてしまったのだ・・・・傑作戦争映画『史上最大の作戦』のワンシーンである。

 弾薬の性能が優れており、さらに発射装置たる銃の構造が優れているという二つの条件が重なって、はじめて名銃が成立するという説明は既述した。20世紀初頭の1901年に優秀な拳銃弾薬の9mmパラベラム弾を生んだドイツは、さすがに銃器大国だけのことはあり、ほぼ同時期の1905年、やはり優秀な小銃弾薬の7.92mmマウザー弾を生み出した。今日では7.92×57mmマウザー弾と称されるが、9mmパラベラム弾の場合と同様の理由で、本弾薬もまた、筆者としては薬莢長を含まない旧名の7.92mmマウザー弾で通させていただく。

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