精神科医の中には「しっかりした専門家」もいるが、産業医の現場で接する精神科医たちは、臨床の現場で実際にかなりいいかげんな診断と治療をしている。こう警鐘を鳴らすのは、「産業医」(※事業場において労働者の健康管理等について、専門的な立場から指導・助言を行う医師。労働安全衛生法により、一定の規模の事業場には産業医の選任が義務付けられる)として多くの企業でメンタルヘルスの面談を行う山田博規氏だ。山田氏が3月に刊行し話題を呼んでいる『あなたは“うつ”ではありません』から紹介する第8回。
【本書(編集部注:本記事)はうつ病を治すためのノウハウを紹介する類の本ではありません。むしろ現在うつ病の投薬治療を受けている方にとっては、受け入れがたい事実がたくさん書かれているかと思います。
 ですが、くれぐれも自己判断で現在処方されている薬の量を減らしたり、服用を止めたりしないよう、お願いします。
 抗うつ薬をはじめ、精神科で処方される薬は、一般的な薬と比べて体に強く作用するものが多いため、自己判断で減薬したり服用を止めたりすると、体調を悪化させるおそれがあります。
 安易な診断でうつ病にされている人が多くいるのは事実ですが、本当にうつ病で苦しんでいる人がいることもまた事実です。】

【精神科医は、いいかげんな専門家】

 

 精神科医の処方する薬を飲んだことで、職場の人間関係やオーバーワークの悩みが解消されるわけではありません。仮に薬が効いて多少気分が楽になったところで、問題の根本的な解決にはなりえません。この点を無視しているところが、今日の「メンタルヘルス対策」のおかしな部分だと言えます。

 メンタル休職は、メンタルに問題を抱えた社員としっかりと対話し、気分の落ち込みの原因を見つけて対処するという、ごく当たり前の方法である程度防ぐことができます。

 それを実行するのは、別にメンタルの専門家でなくても、あるいは産業医でなくても可能でしょう。

 職場の上司や同僚との相談で解決できる問題もあります。

 その当たり前のことをせずに、形だけのメンタルヘルス対策で「いいかげんな専門家」に問題を丸投げしているから、メンタルヘルス対策に力を入れている企業ほどメンタル休職が増えるという皮肉な現象が起こっているのです。

 何しろ、肝心のメンタルの専門家、すなわち精神科医は、その社員の気分の落ち込みを治すどころか、彼を病人に仕立て上げることにひと役買っているのですから……。

「精神科医を〝いいかげんな専門家〟呼ばわりするとはなにごとだ。門外漢が言い過ぎではないか」と思われるかもしれませんが、事実だから仕方ありません。

 

 ここまで断言するのは言い過ぎだと思われる方も多いでしょう。

 これは、けっしてひとりひとりの精神科医が、いいかげんな気持ちで診察しているという意味ではありません。

 そうではなくて、いくら真摯に診察しようとも、うつ病のパラダイム自体がいいかげんであれば、いいかげんな結論しか出せないのです。

 そして、そのパラダイムがいかにいいかげんな代物であるかを知っていただくのが本書の趣旨なのです。

 もちろん、精神科医の中には「しっかりした専門家」もいることは承知しています。しかし、少なくとも私が産業医の現場で接する精神科医たちは、臨床の現場で実際にかなりいいかげんな診断と治療をしています。

 何がどういいかげんなのかと言うと、DSMという「いいかげんな仮説」を絶対的なものだと信じて病気を診断し、モノアミン仮説というまた別の「いいかげんな仮説」に基づいてあまり効果のない投薬治療をしているのです。

 そもそも精神医学界という業界自体が、DSMを根拠に、本来病気ではないものを心の病気だと言い張って、精神疾患の患者を増やすという「いいかげん」なことをしてきた歴史があります。近年、世間で騒がれているうつ病患者の急増は、その最たる例です。

 また、あまり知られてはいませんが、現在使われているDSM‐5では、肉親が死んだ悲しみが長引いてもうつ病と診断できることになっています。さらに驚くべきことには、痴漢行為をやる人も病気だと診断されてしまいます。

 あまねく人生における悩み、不都合なこと――DSMは、それらすべてにもっともらしい病名を付けて、精神科の病気にしてしまっているのです。

 それが本当に薬で治ればいいのですが、当然ながらそんな病気を治す薬など、どこにもありません。DSMが「いいかげん」と言われてもやむをえないゆえんです。

(取り上げる事例は、個人を特定されないよう、実際の話を一部変更しています。もちろん、話を大げさにするなどの脚色は一切していません。また、事例に登場する人名はすべて仮名です。本記事は「あなたは“うつ”ではありません」を再構成しています)。

<次回は 新薬の登場でうつ病患者が急増した について紹介します>