プレッシャーを避けるではなく、うまく利用する――。日々重圧の中で戦う日本のビジネスマンに向け、現在ラグビーイングランド代表で指揮をとるエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)がアドバイスを送る。特別連載第6回。

■相手の頭の中に「考えを植え込む」

――ここまで、自分自身が受けるプレッシャーへの向き合い方、指導する自チームの選手のプレッシャー耐性の鍛え方などについて語って貰った。では、勝利を手繰り寄せるために対峙する相手には、どうプレッシャーをかけているのか。

 私がよくするのは、試合前に相手の頭の中に「考えを植え込む」というやり方だ。前に話したように、人は頭の中にある考えに基づいて行動する。だから対戦相手に、こうした戦術をとってほしいというときには、「こういう戦い方をした方がいい」と思わせるような発言を試合前の会見などですることはある。

 ただ、こうした駆け引きは常にメディアを通じてやることになるので、時に発言が歪められたり、誇張されたりすることもある。こうした心理戦は、上手くいくこともあれば、上手くいかないこともある。

――自分の力ではコントロールできないことは心配しない、というのがモットーでは?

 勿論、こうした心理戦を相手が実際にどう解釈するかは、私のコントロール外だ。しかし、私は代表チームの監督として、自分の力でできることは全てやる。メディアを通じて、相手に心理的なプレッシャーを与える。これで勝つ可能性が少しでも上がるなら、私は敢えてそれをする。当然プレッシャーを感じているのは、自分たちだけではない。相手だってプレッシャーを感じている。ここで相手が感じているプレッシャーに対して、自分で何かできることはないか、というのが私の考えだ。

 

■対戦相手の心理を想像する

――こうした心理戦を展開する際のポイントは?

 とにかく、対戦相手の心理を想像して理解すること。自分にとってのプレッシャーの質や、選手を成長させる為のプレッシャーの与え方など、プレッシャーというものは個人ごと、或いはチームなどの集団ごとで、それぞれユニークな特性を持っている。それぞれの個人や集団にとって、何が一番大事か、何を恐れているかを理解して、適切なプレッシャーを与えていく。

 この原理も、ラグビーの世界に限った話ではない。ビジネスの世界でも、競合や協働しながら、他の組織を相手にして、自分の組織に利益をもたらさなければならない、という場面があるはず。自分の組織がどういう行動をとると、他の組織はそれをどう考え、どういう行動を起こすか。これを、プレッシャーという切り口で考えてみるのは有益なことではないだろうか。