日本全国に数多ある名字に高校生の時から興味を持ち、研究を始めた高信幸男さん。自身が全国を行脚し出会ってきた珍名とそれにまつわるエピソードを紹介する。

 日本は昔から稲作が盛んで、5月には全国各地で田植えの風景が見られる。今では農業も近代化が図られ、大型機械で田植えをするが、昔は5月の晴れた天気の中、五月女(さおとめ)の田植え姿が見られた。稲作文化の日本では、名字の中にもその光景が現れている。今回は、稲作に関する名字を紹介したい。

 名字の中で、最も多いのが「田」の付く名字である。山田や太田、上田…等、「○田」と「田」の名字は約1000ある。田の位置から生まれた上田や中田、田の大きさから生まれた大田や小田、田の形から生まれた丸田や細田、田の広さから生まれた一反田や二反田、収穫の時期から生まれた早稲田(わせだ)や奥田(おくだ)等、様々である。それらの名字は、それぞれの「田」の近くに住んで付けられたものである。また、田を管理する者から生まれた齋田(さいた)や彦田(ひこた)、君田(きみだ)等の名字もある。

 

 稲作に関係のある名字では、稲(いね)・苗(なえ)・早苗(さなえ)・田植(たうえ)・五月女(さおとめ・そうとめ)・穂刈(ほかり)・穂積(ほづみ)・米(こめ・よね)・籾(もみ)・俵(たわら)等の名字の他、稲作には欠かせない雷(かみなり・いかづち)と稲妻(いなづま)さんもおられる。また、稲を耕作するために必要な田(た・でん)・畔(あぜ・くろ)・畦(あぜ・くろ)・土手(どて)・堀(ほり)・堤(つつみ)・川(かわ)・水路(みずじ)等の名字もある。五月女早苗(さおとめ・さなえ)さんという方にお会いしたことはないが、素敵な名前なので日本のどこかにおられるのではと思う。

雑誌『一個人』2018年6月号より構成〉