批判を乗り越えて

 

 長いシーズンが終わった。結局、リーグ戦は6位。ずっと優勝争いをしていたのに、ACL(アジアチャンピオンズリーグ)の出場権すら逃した。

 終盤戦は本当に勝負どころで勝てなかった。

 振り返ってみても、ただただ自分たちの勝負弱さが腹立たしい。大量失点続きで、およそ優勝争いするチームではなかった。

 最後まで声を枯らせて応援してくれたサポーターの皆さんには本当に申し訳ない思いでいっぱいだ。来シーズンこそは……。この強い気持ちを忘れないようにしたい。

 サポーターの皆さん、今年はすみませんでした。来年も熱いサポートを宜しくお願いします。

 

「もっとやれた」

 

 浦和レッズ4年目の今シーズンを一言でいうとすれば、「もっとやれた」。

 3冠はおろか、リーグ戦は昨季より順位を落としてしまったし、個人的にもまだ上を目指せると思う。8得点11アシストは、プロ入り後自己ベスト。それでも自分の中では、満足できるものではなかった。これまでもコラムで書いてきたように、少しずつサッカーへの取り組み方を変え、結果が出てきたことには手ごたえがある。

 でも、やっぱりチームが勝てないと「もっとやれた」はずだ。そう思ってしまう。
もっとやれた
 これはきっと、今年一年のレッズに対する、サポーターのみんなの思いでもあるんじゃないだろうか

 今回はそんな彼らとの関係について、未来日記を書いてみたいと思う。

 振り返れば、移籍1年目からレッズレポーターの“熱さ”に驚かされてばかりだった。

 レッズは勝利を求められるクラブだから、その変化の違いに悩んだ時期もあった。とくに、試合に負けた後はいろんな出来事が起こった。

 たとえば、「ふざけるな!バカ野郎!」はまだいいほうで、書けないような言葉を浴びせられたこともある。そんな野次が飛んでくるのは日常茶飯事だった。あるときにはチームバスに乗り込もうとした瞬間、ひとりのサポーターが目の前までやってきて、精神的にかなり思い悩むことになる、きつい誹謗中傷的な一言を言われこともあった。あのときのことはいまでも脳裏に焼き付いている。

 そのときは、さすがに「それはないだろう」と思い言い返したけれど、サンフレッチェ時代では味わったことがない強烈なものばかりで、面喰らった。 

 

“熱い”気持ちに応えたい
 

 もちろん、そんな過激な人たちばかりではないし、過激な人たちもクラブの勝利のことを真剣に願っているからこそ出てしまったのだと思う。

 レッズには常に僕らの背中を押してくれるサポーターの方々がいた。いまでは“熱い”サポーターがいることがレッズの魅力であることも感じている。

 成績が出なくて苦しんでいた時期は、観客数の落ち込みを懸念する声が出ていた。それでもつねに3万人以上もサポーターが入ってくれていた。

 チームメイトのなかには、

「今日は3万人か、少ないなぁ」

という選手もいた。しかし、結果が出ていなくてもそれだけ応援してくれるのだから、サポーターの温かみを感じずにはいられなかった。むしろありがたいなって素直に思っていた。だって、3万人だ

 サポーターの存在は、苦しいときこそありがたみを感じる。たとえば、先日のサガン鳥栖戦。試合後、スタンドからひとりのサポーターが僕に向かってこう叫んできた。

「柏木! このチームは誰がまとめるんだ? どうやって立て直すんだよ」

 突き刺さった。絶対に負けてはいけない試合で敗れて、優勝の可能性が消えた瞬間だったからこそ、本当に重くのしかかった。

 選手の誰もが勝ちたくて戦っている。
 でもうまくいかない。
 僕自身ももどかしさを感じていた。敗れた後だったから僕も少し感情的になりそうだったが、どうやって応えたらいいか分からなかった。サポーターのみんながチームのことを一緒に心配してくれている。
 だからこそ、サポーターと会話する機会はほとんどないけれど、どうにか彼らの気持ちに応えたいという思いはつねに持っているつもりだ。

 

忘れられないチャント

 

 できれば、サポーターの気持ちにすべて応えたい。そう思えるのも、僕自身がレッズサポーターを信じているからだ。

 移籍3年目目くらいから、ミシャのサッカーが浸透してきて、ボールが回り始めてきた。サポーターの掛け声も、それに合わせたものになってきた。ボールが前に運べたら拍手をくれて、後ろに戻してもブーイングをしない。サポーターも浦和のサッカーをしっかり見ているんだなって思った。そういうのが出てきて僕自身は素直に嬉しかったし、サポーターに後押しされているのが伝わるから、試合自体もすごく盛り上がる。

 そしてもうひとつ、僕の心をつかれたエピソードがある。

 2010年11月7日。この日、初めて僕は浦和レッズの一員として、かつての所属チーム・サンフレッチェ広島のホームスタジアムに足を踏み入れた。

 どんな批判が待っているのか、ずっと心配でいた自分の背中を押してくれたのが、レッズサポーターだった

「アレアレ柏木 ラーラーラーラララ 浦和の太陽 俺たちの柏木陽介」

 試合前、ウォーミングアップのためにグラウンドへ出ていくと、アウェー側のゴール裏から、聞いたことのない歌が流れてきた。

「これって、まさか俺のチャント(応援歌)?」

 生まれて初めてのチャントだった。サンフレッチェ時代は応援歌がなかったから、本当に嬉しかった。いや、嬉しさを超えて、もはや半泣きしていた。

 試合は負けてしまって恩返しはできなかったけれど、あのとき以来、僕の気持ちはレッズ色に染まったといっても過言ではない。

 あのときのことはいまでも感謝してもしきれない。その恩返しのためにも、絶対に来年の未来日記には「タイトル奪取」と書き記さないといけない。

 サポーターとクラブはどちらがなくても存在しない

 だから「サポーターの批判に応えられる選手になる」。それは、僕のチームの一員としての使命だろう。

 サポーターの厳しい声にも、温かい声にも、自分なりの回答を見つけていく。そうやってお互いきちんと意識し合うことで、もっと高みを望めたら、こんなに素晴らしいことはない。

 最後になったけれど、今年も本当に一年ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。 

 ということで今回はここまで。サポーターとの関係もそうだけど、人生はなにより信頼関係が大事! そのことを再確認したところで、年内最後となる次回のテーマは…「失敗の克服法」について。ではまた2週間後!


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