■5年後に生きている確率がネットで簡単に調べられるなんて

連載「母への詫び状」第十七回〉

 2018年の今、病気で入院中の患者にスマホを与えたら、ほぼ間違いなく自分の病気について調べるだろう。

 患者本人だけでなく、家族も同じである。

もし母がスマホを持っていたら、絶対に自分の病気を調べていたはずだ。
写真:フォトライブラリー

 肺炎で入院していた70代の母にガンが見つかったとわかったときは、インターネットを駆使していろんなことを調べた。 

 まずひとつ注釈を入れさせていただく。母の病気については「ガン」とだけ記し、どの部位だったのか、どんな進行状況だったかなどには詳しく触れない。特定すると、記述に医学的な正確さを求められてしまうかも知れないし、また、母のガンは1種類ではなく複数に及んだ。病気のレポートが目的ではないので、この記事中ではそれらをまとめて「ガン」とだけ表記する。

 さて、母の病気に関して最初にネットで調べたワードは「余命」だった。家族が気になるのはここだろう。あと何年くらい生きられるのか。

 しかし実際に検索してみると、どうやら余命という単語はあまり適切ではないらしいと気付く。「Aというガンは余命1年です」とか、「こんな病状なら余命3年です」などと、答えが出てくるものではないからだ。 

 それよりも「5年生存率」という単語が、こちら側の欲している情報を得るには適切なようだとわかってきた。

 診断から5年後に何パーセントの確率で生きているか。なんともリアルで、それでいて曖昧さのある数字である。

 これが何パーセント以上なら、家族は、そして患者本人はホッとするのだろう。50%あれば希望を持てるのか、それとも80%以上ないと悲観が上回るのか。
 降水確率が何パーセント以上なら、人は傘を持っていくのかに似ている……いや似てないか。

 さらに調べていくと、そのガンのステージごとの生存率のグラフなども見つかり、たとえば12ヶ月後や30ヶ月後に、何パーセントの確率で生存しているか。それが治療によってどう変化するかなども示されている。生存率のグラフは月日の経過とともに、どんどん下がっていく。

 ああ、今はネットさえあれば、こんな資料が簡単に見つかるんだ。

 欲していた情報を入手できたのはありがたかった。と同時に母がガラケーしか持っていないことに安堵した。

 これで病状が深刻な場合、患者がスマホやパソコンを使える人だったら、家族はどういう対応を取るのだろう。自由に調べさせるのだろうか。

 
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