■調べてわかったガンの「ステージ」。考えさせられた「5年後の母」

 ガンのステージによって深刻度が大きく違うという、当たり前の現実にも直面した。

 その資料によれば、母の病気はステージ1(早期)なら5年生存率が約80パーセント。しかしステージ3なら、それが20パーセント台にまで落ちる。

 ステージは0から4まで分類され、もっとも進行したステージ4なら、5年生存率は5パーセントにも満たない。

 ぼんやりと担当医の説明を思い出すと、「ガン切除の手術をします。たぶんステージ1でしょう。ただし、生検をしてみないと診断はまだできない」という話だった。

 生検とは、病変の一部を採って顕微鏡で細胞を調べる検査のこと。手術のときに組織を採り、手術後しばらくしてから検査結果がわかる。もし仮にリンパ節への転移が認められれば、母の診断はステージ3になる。

 まとめれば、こういうことだと理解した。

『あなたのおかあさんはガンです。たぶん5年後に生きている確率は80パーセントくらいの早期の段階なので、手術をします。でも、検査してみないとわかりません。もしかしたら5年後に生きている確率が20パーセントくらいの段階の可能性もあります』

 悲しいのか、悲しまなくてもいいのか。頭がぐるぐる回って、思考が働かない。

 8割生きているなら、悲観する必要はないだろう。しかし、それでも生きていない確率が2割ある。

 8割生きていないなら悲しい。悲しすぎる。しかし、それでも生きている確率は2割ある。

 そもそも病状がどうだろうと、年老いた母が5年後に生きている確率は100パーセントのはずがないのだ。5年生存率という単語を知ってしまったがゆえに、今まで想像したことがなかった「5年後の母」を具体的に考えざるを得なくなった。

 母だけではない。父の認知症にも「5年生存率」のようなものはあるのだろうか。そういえば父はパーキンソン病も患っていた。5年後にふたりとも生きている確率はどのくらいあって、ふたりとも生きていない確率はどのくらいあるのか。

 天気予報の降水確率を見ながら、傘を持っていくかどうかを決めるのとは話が違う。

「手術ができるってことは、早期の段階という証拠みたいだから、安心して」

 見守るだけの無力な息子は、せいぜい楽観的な言葉を母にかけるくらいしかできなかった。

 

※本連載は隔週木曜日「夕暮時」に更新します