7人が死亡し、10人が重軽傷を負った「秋葉原連続通り魔事件」(2008年6月)はまだ記憶に新しいところ。先日も、東海道新幹線「のぞみ」の車両内で、3人が殺傷される事件(本連載1回目)が起きた。本書『殺人に至る「病」 精神科医の臨床報告』(ベスト新書)にも「通り魔」について1章分がさかれている。

■被害者がどんな人かは関係なく殺傷に及ぶ「無秩序型」 

 

--通り魔殺人では、犯人と被害者にまったく接点はありません。犯人の供述として「誰でもよかった」という言葉がよく使われますが、通り魔の犯人に共通するところはありますか。

岩波 本にも書きましたが、加害者の特徴として、20代から40代の男性で、反社会的な態度を持ち、家庭環境も恵まれないなどのケースがよく見られます。被害者がどんな人かは関係なく殺傷に及ぶ。それを「無秩序型」と呼ぶこともあります。

--本書では、無秩序型の事例として2008年7月に起きた書店員殺人事件の詳細が分析されています。秋葉原の事件から1か月後のことになります。

岩波 犯人は「できるものなら自分でもやってみたいと思った」と、秋葉原の事件が犯行の後押しになったことを述べています。両親から親らしい面倒はみてもらっていず、プレス工の仕事もうまくいかず、家出してホテルに滞在中にショッピングセンターの書店で事件を起こしました。

--最初は狙っていたお客の女性を刺しましたが逃げられたので、次に書店員を刺して死に至らせました。

岩波 男性よりも抵抗が少ないだろうと女性を狙ったのです。犯行直後から「両親を困らせたいと思った」「殺人を起こすくらい悩んでいたと知ってほしかった」と述べています。両親からネグレクトを受けていた家庭環境が影響していたことがうかがえます。

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