東大卒で、学生時代は友人からも慕われていたオウム真理教元幹部・豊田被告。何が彼を変えたのか?精神科医岩波明が、オウム真理教による洗脳の正体を『殺人に至る「病」-精神科医の臨床報告-』(ベスト新書)で分析する。

■「変な宗教に入るな」と厳しいしつけ

 

 豊田の両親は、比較的厳しいしつけをする人たちであった。父親は教師で、豊田は父親のことを「悪いことをしたりすると非常に厳しかった」と述べている。母親は専業主婦であるが、「厳しいとは言えないかもしれませんが、注意すべきところは注意するような人」と表現している。祖父も理科の教師をしていたとのことで、教師が続く家系であった。

 父親は、豊田が大学に入る前から、変な宗教に入るなと言い聞かせていた。豊田が出家する際に家族に何も言わなかったのは、家族に反対をされることで、「出家という善業、善を妨害するとすれば、その妨害する側にとっても悪業になってしまう」と、家族にとっての悪業になることを恐れたことが理由として述べている。

 後に父は事件について次のように語っている。

 こんな大事件を起こして責任を取るのは当たり前です。私たちはここに減刑の嘆願に来ているわけではないんです。ただ被害者の方に謝るだけです。すんません。つらいです。なんでやねん、なんでやねんと、そればっかりなんです。頭の中をぐるぐると回って、私の頭ではわからないです。(『オウム法廷⑩』前掲書)

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