■「まだ、口あけだよ」

 切見世は長屋形式だったため、「○○長屋」と呼ばれた。

 図2は、男ふたりが吉原の稲荷長屋と呼ばれる切見世の路地にはいったところ、ひとりが荷物をつかまれ、強引に誘い込まれる――

写真を拡大 写真を拡大 図2『江戸久居計』(丘亭春信著、文久元年)/国立国会図書館蔵

 稲荷長屋にはいるに、待ちもうけたる切見世の女、弥次郎の背に負いたる風呂敷包みをつかまえる。

「何だ、何だ、苦しい、苦しい、放せ、放せ」
 女、
「遊んでいっておくれ。まだ、口あけだよ」

 女の言う「口あけ」は、「まだ、きょうは客を取っていないから、おまえさんが初めてだよ」という意味。

 ただし、それが本当かどうかはわからない。

 近代の娼婦のジョークに、

「きょうはまだ処女だよ」

 がある。
 それに似ているといおうか。