■最強の「間に合わせ」、マルダーII、マルダーIII

マルダーIIIの中期型であるH型。砲こそドイツ製の7.5cm対戦車砲Pak40を搭載しているが、戦車型と同じくエンジンがまだ車体後部に架装されているため、戦闘室は本来なら砲塔が取り付けられる車体中央部に設けられた。

 

 ・・・・「正面にT34が3両。真っすぐこちらに近づく!」

 厳重に隠蔽された射撃陣地にダック・インしたマルダーIIIの車長が僚車に伝える。それを聞いた装填手が、車体の脇に陣取っている機関銃チームに怒鳴る。

「来るぞ!イワンの歩兵どもが見えたら刈り取っちまえ!」

「こちらも確認済み!俺は左端のやつを最初に撃つからお前は右端のやつを頼む。で、真ん中のやつは俺でもお前でもどちらか早いほうが撃つことにしよう!」

 左翼に同じくダック・インしている僚車の考えに賛同した車長は短く返答した。

「了解!」

 そして、自車の乗員に向けて命じる。

「砲手、右のやつに徹甲弾を見舞ってやれ。で、再装填後すぐに真ん中のやつを殺る!」

「フォイア!」

 初弾がT34の車体前面装甲を直撃。命中個所から一瞬、すみれ色の閃光が閃くとガクンと停まった。

「よし!次は真ん中の・・・・いや、撃たなくていい」

 真ん中を進んでいたT34は、すでに僚車に撃たれて機関室から黒煙を吹き上げた瞬間だった・・・・

 1941年6月の「バルバロッサ」作戦でソ連に攻め込んだドイツ軍は快進撃を続けたものの、ソ連軍の「攻・防・走」三拍子揃ったT34中戦車と、重装甲のKV重戦車の出現には大きな危機感を抱いた。これを「T34ショック」「KVショック」と称する。というのも、当時、この両車にかなうドイツ戦車が存在しなかったからだ。そして、未熟なソ連戦車兵に対して歴戦のドイツ戦車兵が、戦車の性能の劣勢をかろうじて「腕前」で補って勝っていたというのが実情だった。

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