容姿や性格、体型、生まれ育った環境…人は皆、大なり小なりコンプレックスを抱えて生きている。「もうこんな自分は嫌だ…」とわたしたちは、自分を否定してしまいがち。しかし各界の最前線には、むしろそれをポジティブにとらえ、バネにしている人がいる。連載「コンプレックスをバネにする」第1回は、ラグビー日本代表の田中史朗さん。日本代表として、2015年W杯南ア撃破に貢献。世界最高峰のスーパーラグビーで優勝も経験しているレジェンドだ。田中さんの身長は166センチ。フィジカルがモノを言う競技で、「小さい」こととどう向きあい、活躍の糧にしてきたのか。

■背の順でずっと1番前。大きくなりたかった

 

 小さいこと、昔はコンプレックスでした。小学校、中学校、高校と、…たまに2番がありましたけど、学校でもだいたい1番前。中学1年生のときで138センチだったかな。嫌だったのは、集合写真のとき。別にいじめられていたわけではないんですが、友達から「はよ前に行けよ」と言われて前に座るのが嫌で。

 大きくなりたいと思って中学時代は牛乳を1.5リットル、毎日飲んでいました。1リットルじゃ足りないと。毎日夜中下痢に悩まされながら続けました(笑)。でもあまり効果はなかったですね。

 結果的に小さかったからこそ、負けず嫌いになれたのかもしれません。大きい人には負けたくなかった。高校時代は体格のいいチームメイトと、トレーニングのたびに張り合っていました。彼が100m走ったらぼくは110m、また彼が120m走ってぼくが130m…。そんな感じで競い合っていくうちに高校日本代表にも選んでもらいました。高校の先生には「お前は小さくてもスピードがある」と言われ、そこから「スピード」も小さい自分の武器として意識するようになりました。

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