連載「母への詫び状」第二十五回〉

■これまでのあらすじ

 当連載は話が時系列順に進まず、行ったり来たりするので、一度「ここまでのあらすじ」をつけて、初見の人にも夕暮家の事情がわかるように整理しておきたい。 

〈あらすじ〉

 ここまでのあらすじ。
 東京で出版関係の仕事をしていた40代後半のぼく。両親はふたりとも学校の先生を勤めた後、退職。父親はお堅い頑固者のため、フリーランスの独身息子とソリが合わず、長い間、疎遠だった。
 ある日、母から電話があり、父の認知症が進んでいることと、母に病気が見つかったことを知らされる。取り急ぎ実家へ帰った息子が直面したのは、予想以上の事態の深刻さだった。
 認知症の父はたびたび徘徊して、警察の厄介になるほど。それをひとりで面倒見ていた母も身体の病気に見舞われ、今すぐに入院が必要な状況だった。
 こうしてぼくの介護生活がスタートした。まずは母を入院させて、父との自宅介護の日々が始まる。介護用語はわからない、ろくに食事を作ることもできない、役立たずの息子だったが、どうにか役目をこなす。
 一緒に住んでいた子供の頃には知らなかった父や母の姿にも触れ、「介護は大変だけど、親との関係を見つめ直すことができて、小さな幸せもあるのかも知れない」と思うようになる。
 やがて父が特別養護老人ホームに入所できることになり、ほっと一息。しかし、ようやく退院した母にあらたな病気が見つかり、検査の結果、どうやら5年後に生きているのは難しいかもしれないと知る……。あらすじは以上。

次のページ 病院通いの日々で、記憶に残っている『NHKのど自慢』