■「平穏で退屈」

写真を拡大 図2『絵本吾妻抉』(寛政9年)

 図2に、大通りである仲の町と、その両側に軒を連ねる引手茶屋が描かれている。
 仲の町から見て大門の右手に小屋があるが、これが面番所である。いわば町奉行所の出張所であり、小さな建物――まさに小屋だった。

 建前としては、面番所の役割はお尋ね者などが出入りしていないか監視するというのだが、史料で確認できる限りにおいて、面番所が果たした役割は不明である。

 面番所の役人が凶悪なお尋ね者を発見し、召し捕ったという記録もない。

 おそらく、面番所に詰めた同心は、妓楼からの持ち回りの供応――酒と肴――を受け、平穏で退屈な日々を過ごしていたのであろう。

 妓楼からすれば役人が「平穏で退屈」なのが理想だった。

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