■圧倒的に便利なユースケースの先に求められるもの

 技術的な課題をクリアして、新しい魅力的なサービスが登場すれば、ブロックチェーンはわたしたちの半径5メートルの生活を変えてくれるのか。しかし、最終的にカギとなるのは、われわれ一人ひとりのテクノロジーに対する姿勢だ。森川氏はこう言う。

「究極的にはブロックチェーンは関係なく、いまよりも生活の質を上げたいか?みたいなレベルの話だと思うんです。テクノロジーは常に人間の生活・人間ができることを拡張していくもの。でも、例えばAIやVRに対して、『新しいもので嫌だ』という姿勢の人がずいぶん多いなと思います。逆に若い世代はそうではなくて、世代の壁を感じますね」

 確かにAIにしても、30代に突入した記者自身「仕事を奪うもの」というネガティブな目で見ているフシがある。

「AIであれば、それをどう活用して、どう自分の仕事にレバレッジをかけるか、という視点がありますよね。ブロックチェーンも全く同じで、『何を変えるか』よりも『どう使うか』の方が重要です。たとえばアーティストが自分の楽曲の著作権をブロックチェーン上で管理して、売買の場にする。そして購入された金額はそのまま還元してもらう、という使い方があり得ます」

 これと似た例で、Steemitという記事公開プラットフォームがある。ここではライターが書いた記事に対して、STEEMという仮想通貨が直接与えられる。活用次第では、これまでのように媒体から中抜きされた原稿料を受け取るより、はるかに多くの収入を得ることも可能になるだろう。こうした仕組みを利用して、よりよい働き方を構築し、自分が生きる世界を主体的に変えることができる。待っているだけでなく、ユースケースを自分の頭で考え、ポジティブに活用していく、というスタンスがユーザー側にも求められている。

 そう。そもそもの前提を疑うべきだったのだ。ブロックチェーンは技術の一つにすぎない。事業者がそれを用いて新しい体験を提供していったとき、最後の鍵はわたしたち一人ひとりが「使おうとするかどうか」である。ブロックチェーンがわたしたちの半径5メートルの生活を変えてくれる、ではない。ブロックチェーンを使ってその半径を6メートル、7メートルに拡張していくのだ。「だからこそ、わたしたちGincoはユーザー一人ひとりが『使ってみたい』と思ってもらえるようなブロックチェーンサービスを追求し続けます」森川氏はこのインタビューを、そう締めくくった。