2017年、生まれつき髪が茶色い女子高生が、学校から黒髪に染めることを何度も強制された結果、不登校に追い込まれたとして訴訟を起こしました。このような事件は、最近に限らず、過去何度も問題になってきたとパオロ・マッツァリーノ氏は新著『歴史の「普通」ってなんですか?』で述べています。

■強制黒染め指導の黒歴史

 

 地毛が茶色いにもかかわらず、学校から黒髪に染めることを強要されたという例は、2017年の例が最初というわけではありません。調べてみると、同様の例は多数報道されてます。報道されなかった事例がその何倍、何十倍あったであろうことは、だれもが容易に予想できるはずです。

 1994年、静岡県の中学陸上大会では、競技で優勝した生徒を表彰する段階になって、大会役員からあいつは髪が茶色いと指摘され、失格となり、メダルを剝奪されてしまいました。

 茶髪と疑われ優勝を取り消された生徒は、髪を染めてはいない、日焼けやドライヤーなどのせいで自然に変色しただけだと抗議しました。
 私が調べたところ、よほどのことがないかぎり、ドライヤーの熱で髪が脱色することはないそうです。そんな簡単に茶髪になるなら、スーパー銭湯で、おっちょこちょいなおじさんがドライヤーで髪乾かすのに失敗して、みんな茶髪になってるはずです。

 そんな人、いないでしょ。
 日焼けが原因の脱色、変色は、個人の髪質によっては起こりうるそうです。毎日屋外で陸上の練習をしてたなら、髪の毛が脱色することはありえます。水泳部員なら、プールの塩素で脱色することもありますし。

 

 そういう不可抗力による髪色の変化までいけないというのなら、日焼けして肌が茶色くなった生徒も生まれつきの肌の色じゃないから失格なのですか。

 この例は茶髪がブームになってきたころのことなので、染めたのではと役員が疑ったのもわからないではありません。でも、茶髪がブームになる以前の一九八九年、岡山の私立女子高で、生まれつき髪が赤い生徒に黒く染めるよう強要していたという件はどうでしょう。この時期に髪を染めていたのは本当のヤンキーくらいなもので、一般生徒がファッションで染めたと疑うのにはムリがあります。

 わりと最近ですが2005年にも宮城県で生まれつき茶髪の生徒に教師が黒いスプレーをかけたことで裁判ざたになってます。このとき読売新聞が読者に意見を募ったところ、自分の娘が同じ目に遭わされたと訴える投書が何通も届きました。掲載されたなかでもっとも古い例は、投書者自身が約40年前に高校入学後、先生からいきなり不良と決めつけられて髪を黒く染め直せと命じられたというもの。このかたは、生まれつき茶色なのだと母親に説明してもらい黒染めはせずにすんだものの、教師から謝罪の言葉などは一切なかったとのこと。

 記事掲載時の40年前ということは、1965(昭和40)年ごろです。茶髪という言葉がなかったどころか、まだ髪を染める人が珍しかった時代から、すでに日本の学校では、強制的な黒染め指導が行われていたということです。

〈『歴史の「普通」ってなんですか?』より構成〉