連載「母への詫び状」第二十八回〉

■ 介護老人をだます大バカ者

 人をだまして商売するには、都会より地方のほうが簡単である。

 

 地方には年寄りが多い。純朴な人もたぶん多い。逆にマスコミの目は少ないから、悪事に気付き、それを報じるメディアの従事者は少ない。オレオレ詐欺の電話なんて、田舎の高齢者家庭には呆れるほど頻繁にかかってくるし、インターネットのお得な乗り換えプランですという類のセールス電話は、毎日かかってくる。

 こういう勧誘業者は無礼なアホぞろいだから、こっちが電話を切った5秒後にまた、同じアホが電話をかけてきたりして始末に負えない。自分が呼び出し音を鳴らしている向こうに、寝たきりの介護老人がいる光景をたまには思い浮かべてみたらどうか。

 うちの母が悔しそうにしていたのは、羽毛布団だ。

 テレビの通販で羽毛布団を売っているのを見て、急に母がぶつぶつ言い出した。聞いてみると、羽毛布団がたったの2万9800円で売られていることが、どうにも我慢ならないようだった。

「なんでこんなに安いんだろかね。ほんと、いまいましい」

 母は羽毛布団を愛用している。父も使っていたが、介護施設に入ってからは父のものをぼくが使っている。ふわふわ軽くて、暖かくて、それなりに良い品物だった。

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