「一生に一度は買ってみたい」「一生モノのこだわり商品を手に入れたい」――。そんな気持ちにさせる、生活を豊かに彩ってくれるこだわりの逸品。「メイド•イン•東京の名品図鑑」シリーズでは、一個人のこだわり読者に、職人の技が詰まった、東京生まれの逸品を紹介します。
第3回目は、世界に誇る日本の「粋」と「技」の象徴といわれる楊枝の老舗「さるや」です。
 

70本入り7000円の楊枝

さるやは、日本橋に居を構える楊枝専門店。江戸時代から続く老舗だ。古来から上等とされる黒文字という木を使って、熟練職人の手仕事によって1本ずつ作り出されている。たかが楊枝とあなどってはいけない。「真の楊枝は至難の名人芸」とされ、日本が世界に誇り得る「粋」と「実用」の象徴といえるもの。お年賀などの贈答品としても愛されている。

冒頭の写真は、黒文字の楊枝が、ひとつひとつ「金千両」と墨で手書きされた桐箱に収められた商品「千両箱(小型)」で、楊枝70本入り7000円(税別)。この意匠は、日本包装展で銀賞を受賞した。

 

忠臣蔵事件の翌々年に誕生

 さるやが江戸の地に誕生したのは、宝永元年(1704年)。赤穂浪人が吉良上野介の首を討ち取って天下に名を挙げた忠臣蔵事件の翌々年だという。
 楊枝は、江戸名物のひとつに数えられた。宝暦の頃(1750年代)から茶屋とともに楊枝屋も盛んになり、美人の看板娘を置いて繁栄を競ったそうだ。楊枝屋の様子は、国貞や歌麿の浮世絵でも見ることができる。

「現在では、さるやが唯一残るのみとなりました。昔と変わらずに黒文字の楊枝を扱っています」と姿勢を正す山本亮太さんは、9代目の当主。黒文字はクスノキ科の落葉低木で爽やかな香りと弾力性があり、楊枝にするのに最高の素材とされる。歯当たりが優しくて、折れにくく、ささくれ立つこともない。

 

江戸文化の生き証人

由緒ある料亭でも重宝されているというさるやの楊枝。繊細な細工が施される菓子楊枝は、誰もが知るような和菓子の名店からの引き合いも多い。写真上は、お年賀用として好評な、桐箱に干支を描いたシリーズ。写真下が、楊枝を巻いた紙に都々逸が書かれている辻占楊枝で、料亭や旅館、お茶屋さんでも使われている。

粋なおもてなしや贈り物を好む人々からも愛されて、今も江戸文化の生き証人として日本橋でお客を迎え入れる。

 

 
さるや
住東京都中央区日本橋室町1-12-5
☎03-5542-1905