プーチン大統領の鉄拳外交、北方領土問題、ジャーナリストの毒殺まで、日本人から見ると、冷たくネガティブな印象を持ちがちなロシアという国。しかしながら、今年ロシアで行われたサッカーワールドカップ、マリア・シャラポワから、かつての文豪・思想家ドフトエフスキーまで、ポジティブな印象もある。ステレオタイプはさまざまあるが、実際にそこで生きる人の素顔とは。21世紀のモスクワで聞いた。

■「ロシア人はそう簡単には笑いません」

 

「ロシア人は、笑わない」

 日本はもとより、多くの欧米圏でいまだに典型的なロシア人像として言われている、この言葉。2018年の今、モスクワで観光ガイドを務める、アリーナ・バドレディノヴァさん(実名。20代女性)に実際の所を聞いてみた。

「ステレオタイプというものは、理由があって出来るものです。ロシア人はそう簡単には笑いません。特に、仕事をしている時のロシア人は、滅多に笑いません」

 今回はロシア人に対するステレオタイプを覆す為の取材だった。しかし、ソ連時代の教育を受けていない20代の若者にすら、「ロシア人は笑わない」というステレオタイプを、真っ向から肯定されてしまった。21世紀のモスクワで、世界各国から来た観光客を相手にガイドを務めるアリーナさんは、何故このような古いロシアのステレオタイプを肯定するのだろうか。

「とにかく、色々な意味で寒い国なんです。1年の半分以上は寒く、天気も悪い国なので、基本的にムードは下がります。冬季オリンピックが行われ、今年のサッカーワールドカップの試合も行われたソチのように南の方では、天気も良く、もう少し笑う人も多いと思います。でも、モスクワをはじめとしたロシアの大部分は極寒の地です。

 

 天気が人間の心理に与える影響がとても大きいという事実は、どこの国の人でも知ってますよね? 例えば、スペイン、イタリアを始めとしたラテンヨーロッパでは、天気が良く野菜も良く育ち、海からは新鮮な魚介類が採れ、牧場では家畜が幸せな生活を送っています。こうした食べ物が美味しく、いいワインも作れる国の人たちは、よく笑います。私達ロシア人は、伝統的にジャガイモと缶詰で食事を作り、体を温める為に強いウォッカを呑んで、寝るだけです」

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