東京・足立区鹿浜。この「陸の孤島」とも揶揄される場所に、行列が絶えない焼肉屋がある。平日は、17時の開店2時間前、早い日は3時間前から行列ができることも。お客さんのお目当ては新鮮なホルモンと肉だ。その焼肉屋「スタミナ苑」の顔・豊島雅信氏が、著書『行列日本一スタミナ苑の繁盛哲学』を上梓した。そこで明かされた予約を取らない理由とは。

■予約を取らない理由

 

 うちの店は予約を取らない。誰が来たって並んでもらう。有名なタレントだって、政治家だって、誰でもそのルールは変わらない。

 ヘタすりゃ開店の3時間前から待っているお客もいる。暑い中でも、雪の日でも待ってくれるお客がいる。ありがたいことだね。だからその期待に応えるようにおいしいものを出さなきゃなって気が引き締まるよ。

 なんで予約を取らないのか。それにはちゃんとした理由がある。

 それは僕が若い頃の経験からきているんだ。うちの店の前にある薬局の社長は、僕がガキの頃からとてもかわいがってくれてさ、何くれとなく面倒を見てくれてね。この店を手伝うようになって数年経ってからも、よく「マコ、行くぞ」って、フラって店に現れては遊びに連れて行ってくれた恩人なんだ。

 大人の遊びも教えてくれた。社長はギャンブルの達人でさ。本当にすごいんだよ。店に来て僕に金を預けて、 「おい、 マコ。今からこれを持って川口 (オートレース場) に行ってこい」って言うわけ。いつも20万くらいはあったんじゃないかな。当時は電話やインターネット投票なんてもんはなかったから、代理で買いにさ。

 レース場についたら公衆電話からジーコジーコって社長に電話をして、出走表を見ながら試走タイムを電話口で報告するんだ。試走タイムはレース展開の大きな鍵を握っているけど、それだけを鵜呑みにしたってもちろん当たるはずがない。だけど社長はしばらく悩んだあとに、 「よし、これとこれを買っておけ」って買い目を指示してくれる。

 これが毎回連複の一点買いなんだから、驚いちゃうよね。なんだかなぁ、って僕も思うんだけど、その通りに買うと、これが当たる当たる!持ってきた金があっという間に何倍にもなったりするんだからビックリしたね。

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