|#01 『山小屋に現れた5人目』

 
 やはり冬の怪談は雪にまつわる話が多い。とくに雪山は遭難が多いこともあり、幽霊や異形のものと出会ったという話が多く伝わる。
 ここで紹介する話には、幽霊も異形のものも登場しないように思える。それどころか、うっかりすると怪談であることすら気づかずに読み過ごしてしまう。
 しかし、それがありえないことだとわかったとき、ぞくりと恐さがはいのぼってくる。

 ある大学の山岳部のメンバー5人が、地元の山で冬山登山の訓練をしていた。さほど高い山ではないが雪深いことで知られ、毎年何人かの遭難者を出す難所であった。彼らが登った時も途中から猛吹雪となり、道を見失ったあげく、一人が事故で命を失ってしまった。

 死体を抱えて雪山をさまよった彼らは、日暮れ間際にようやく避難小屋にたどり着くことができた。そこは小屋といっても風雪がようやく防げるだけの納屋のような建物で、暖房も明かりもなかった。

「こんなところで眠ってしまったら凍死してしまうかもしれない…」
そう考えたリーダーAは、メンバーたち(B,C,D)にこんな指示をだした。

1 死体を小屋の中央に寝かせる
2 残りのメンバー4人が小屋の四隅に座る
3 Aは壁づたいに歩き、隣りの隅に座っている
  Bの肩を叩き、Bの代わりにその場に座る
4 肩を叩かれたBは、Aと同じく隣りの隅へ行き、
  Cの肩を叩いて、その場に座る
5 CはDの肩を叩き、その場に座る
6 DはAの肩を叩き、その場に座る

 こうして部員たちは小屋の中をぐるぐる歩き続けることによって、なんとか眠らずに朝を迎えることができた。
 しかし、3人が無事でいることを確認したリーダーは、ふと奇妙なことに気づいた。そして、Dにたずねた。

 「お前はどうやってオレの肩を叩いたんだ?」
 Dはきょとんとしながらも、こう答えた。
 「壁づたいに歩いて、隅に座っていたリーダーの肩を叩きました」

 リーダーは真剣な顔で聞き直した。

 「いや、よく思い出してくれ。その次の隅まで行ったんじゃないか?」
 Dは笑って言った。
 「そんな無駄なことしませんよ。隣りの隅にいたAさんの肩を叩きました」

 それを聞いたリーダーの顔はまっ青になった。

 「オレはBの肩を叩いた後、Bが座っていた隅に座っていた。お前が壁づたいに歩いていった隅には誰も座っていなかったはず…」
 

 Dはいったい誰の肩を叩いたのだろうか。また、Aは誰に肩を叩かれたのだろうか。幽霊なのか妖怪なのか、いずれにしろ、そのお陰で彼らは生き延びることができたのであるが…。

 

 

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