振り込め詐欺が社会問題化している。とくに若年層が手を染めるケースが多い。彼らの事情とは。ある日、ライター神里純平のもとに、詐欺グループから抜け出そうとする知り合いの少年から連絡があった。

■「“友達”が都内でオレオレ詐欺を…」

 

「ブー、ブ-、ブー」

 その日私は渋谷区の某所で、新しい企画の打ち合わせを担当者としていた。打ち合わせも佳境に入ろうとしていたころ、ズボンの後ろポケットに入れていたスマートフォンが鳴った。ラインの着信だ。私はなかなか鳴り終わらない着信にイライラしつつ、打ち合わせ前にスマートフォンをカバンに入れなかったことを後悔していた。

 

「新之助」

 担当者が席を外した時に、画面を確認すると、見覚えのある名前がディスプレイに表示されていた。

 私はいやな予感がした。新之助は、このBEST T!MES〈日本の最貧困地帯 沖縄のリアルの回の取材で出会った少年であるが、何かと厄介ごとを私に持ち込むのが常だったからだ。

 担当者が席を外して、しばらく戻ってくる様子がなかったので、新之助に折り返し電話をした。すると、待ってましたとばかりにすぐ電話口に新之助がでて矢継ぎ早にしゃべりだした。

「実は、“友達”が都内でオレオレ詐欺をしていて助けたいんですけど、グループから逃がしても大丈夫ですかね?」「“友達”は、殺されたりしませんかね?」

 いやな予感は的中した。

「大丈夫だよ、すぐに地元に帰るように言ったらいいよ。早ければ早いほどいいからさ」

 そう言い終わる前に担当者が戻ってくるのが見えたので、「新之助、仕事中だからかけなおすよ」と言ってスマートフォンをカバンにしまった。新しい企画の打ち合わせも終わり、担当者と雑談していた。

 18時を少し過ぎたところで「神里さん、今日時間があったらご飯でも行きませんか?」とのお誘いを受けた。

 しかし私は、新之助のことが気になっていたので丁重にお断りをし、クライアントの会社をあとにした。すぐにカバンからスマートフォンをとりだし確認すると結構な数の着信が入っていた。また新之助からだ。

 少しうんざりしたがすぐに掛けなおした。「新之助、俺仕事中なんだよ」と少し機嫌の悪い声で第一声を放った。

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