振り込め詐欺に手を染めている、19歳の新之助という少年から、ある日連絡があった。なにやらめちゃくちゃなことを言っているが、とりあえず少年がいる新宿に行ってみることに。前編に続く後編。 

■もう逃げろ、新之助

 

 新之助が指定してきた場所は、新宿駅の西口だった。

 小田急百貨店前でタクシーから降り、また電話をして新之助と落ち合った。ほんの数か月見ないうちに、新之助はげっそりとやせ細っていた。19歳の少年にしてはずいぶん不健康な様子だ。

「俺は、約束守って来ただろ。さ、タクシーで俺の家に行ってゆっくりしよう」私は新之助に言った。

「あっ、九州から一緒に連れてきた後輩がまだ、事務所にいるんです。なんとか連れ戻せませんか?」新之助はそんなことを言ってきた。まだ様子がおかしい。

 新之助は「出し子」と呼ばれる、振り込め詐欺の末端グループの中にいたようだ。そんな連中の事務所に警察でもないのに足を踏み入れるわけにはいかない。

 

「新之助、悪いけどこの後輩のことは裏切ってくれないか。俺は、お前だけでいっぱいいっぱいだよ」新之助の目を見据えてしっかりとした言葉でいった。

 まだ、新之助は迷っているようだ。

「さ、はやくタクシーに乗って俺の家に行こう」私は半ば強引に新之助の手を引きタクシーにのせた。

 新之助は、まだ動揺していた。「やっぱり俺、殺されたりしませんか?」「神里さんにちくったらまずくないですか?」「一生追われることになりませんか?」とあまりにも現実離れしたことばかり言っていた。

 私の家につくと、暖かいお風呂にいれ、ピザの出前をとってそれをコーラで流し込み30分ぐらいしただろうか。新之助が少し落ち着いたころに私は、諭すようにゆっくりと新之助に語りかけた。

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