■母も大好きだった「ル・レクチエ」

連載「母への詫び状」第三十回〉

 

 11月になると新潟県の家庭には、ある果物が出回るのを知っているだろうか。

 ル・レクチエである。正しい表記は「ル レクチエ」と半角スペースが入るが、ここでは読みやすさを優先して「ル・レクチエ」を使う。

 ラ・フランスなどと同じ西洋ナシの一種と書かないと、なかなか伝わらないのが残念だ。新潟県で洋ナシと言えばル・レクチエと決まっていて、「ラ・フランスより甘くて、香りが強くて、ずっとおいしいのに知らないの?」という果物だが、全国的な知名度は圧倒的に負けている。ぼくも東京に住んでいる頃はル・レクチエなんて知らなかった。

 もともと栽培するのが難しい品種のため、新潟県の一部でひっそりと生産されていた幻の洋ナシだった。それが近年の栽培技術の進歩により、生産量が増えたのだという。

 今や11月から12月のシーズンになれば、地元のスーパーマーケットにはお歳暮用の高額品から、家庭用のリーズナブルなものまで、この芳醇な香りの洋ナシが並ぶ。

 うちの母もル・レクチエが大好きで、入院中も在宅療養中も、毎年、箱買いして欠かさず食べていた。贈り物として届くことも多く、「あらー、こんなに高いル・レクチエが届くんだったら、スーパーで安いの買うんじゃなかったね」という会話も、新潟県あるあるだ。

 

 新潟県は果物がおいしい。そのことに一番気付いてないのが、たぶん当の新潟県民だと思う。食べ歩きが趣味の、東京暮らし30年のおっさんが保証する。米とお酒と雪と花火くらいしか知られていない、この北陸の県が今後売りにするべきは、夏と冬の大きな寒暖差が育む各種の果物だ。

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