■7つの派生型

火炎を放射中のIII号火焔放射戦車。同車は約100両が生産された。第二次大戦においてアメリカはM4中戦車の火炎放射型、イギリスはチャーチル歩兵戦車の火炎放射型をそれぞれ実戦に投入したが、これら火炎放射戦車と戦った各国の歩兵たちは異口同音に、火炎放射戦車は通常の戦車よりもはるかに恐ろしかったと語っている。燃焼剤の火炎放射で受傷する重度の火傷は、銃創や弾片創よりも苦しいことを生身の兵士たちは悟っていたのである。

①指揮戦車

 無線機がまだ大きく、使用周波帯の違いで複数を使い分けなければならなかった第二次大戦当時は、部隊を指揮するための特別の指揮戦車が求められた。

 そこでIII号戦車を基にした指揮戦車が、D1型、E型、H型、K型、J型改造型と造られた。このうち、初期に造られた前3型は、砲がダミーで車内スペースを広く確保していた。

 しかしK型は60口径5 cmKwK 39戦車砲(車内スペース確保のため大型のIV号戦車類似型砲塔を装備)を、また、J型改造型は42口径5cmKwK 38戦車砲を備えており(ただし無線機増設のため車体銃は撤去)、増設した無線機や指揮卓のスペースを確保すべく砲弾の搭載弾数こそ通常型より少なかったが、両車とも戦車としての戦闘行動が可能だった。

②砲兵用観測戦車

 自走榴弾砲を装備する砲兵の前進観測用として、指揮戦車と類似した改造が施されている。車内スペース確保のため砲はダミー。E型やF形などの旧式化した初期生産型のIII号戦車から改造された。

 

③戦車回収車

 損傷戦車の回収用に既存の車体から改造された。

④III号火焔放射戦車

 M型から改造された。鉄パイプ製のダミーの砲身の基部に火炎放射ノズルが設けられており、この鉄パイプから火炎を放射する。火炎の到達距離は使用する燃焼剤の質で異なるが、おおよそ55~80mとされる。

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